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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Review

標的環境モニタリングを用いた入院患者におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌および多剤耐性Acinetobacter baumanniiの伝播能力の比較

Sui W, Wang J, Wang H, et al.
Comparing the transmission potential of Methicillin-resistant Staphylococcus aureus and multidrug-resistant Acinetobacter baumannii among inpatients using target environmental monitoring. Am J Infect Control 2013;41:411-415.

中国の医療施設における多剤耐性Acinetobacter baumannii(MDR-AB;multidrug-resistant Acinetobacter baumannii)の検出率の上昇に伴い、MDR-ABの抗菌薬耐性に着目した研究が数多く実施されてきた。一方で、病院内での感染伝播の実態に関する研究はほとんどされておらず、MDR-ABについてはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のような体系的な感染制御対策は確立されていない。そこで本研究では、MDR-ABの入院患者間での感染伝播の特徴を調査するため、標的環境モニタリングを実施した。
試験は、2010年3月~2011年10月の間に呼吸器集中治療室(RICU)に入院した患者を対象とし、MDR-ABおよびMRSAの入院時スクリーニング検査を実施するとともに、ベッドリネンを対象とした標的環境サンプリングを実施した。得られたデータより、MDR-ABおよびMRSAのベッドリネン汚染率と獲得率とを比較した。また、ベッドリネン汚染率で補正したMDR-ABの週あたりの保菌圧(WCPe;weekly colonization pressure adjusted by degree of bed linen contamination)と、週当たりの獲得率(WAR;weekly acquisition rate)との相関を分析した。
その結果、MDR-ABのベッドリネン汚染率と獲得率は、いずれもMRSAより高いことが分かった(汚染率はχ2=98.081、p<0.01;獲得率はχ2=49.844、p<0.01)。また、MDR-ABのWCPeとWARには相関性があり(rs=0.560、p<0.01)、MDR-ABのWCPeとWARはいずれもMRSAより高いことがわかった(Z=-5.439、p<0.01;Z=-3.258、p<0.01)。
以上より、MDR-AB保菌者による周辺環境への汚染能力はMRSA保菌者より強く、MDR-ABは入院患者間でより容易に感染することが示された。MDR-ABによる院内伝播を効率的に予防・管理するためには、日々の感染制御対策として入院時スクリーニング調査や、標的環境モニタリングを実施することが重要であると考えられる。

(訳:橋倉万由子、木津純子)

Carlisle Vol.18 No.4 p8-10 Winter 2014

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