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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Review

ICU患者における黄色ブドウ球菌鼻腔内保菌状況と人工呼吸器関連肺炎との関連および感染伝播における環境因子の役割

Rocha LA, Marques Ribas R, da Costa Darini AL, et al.
Relationship between nasal colonization and ventilator-associated pneumonia and the role of the environment in transmission of Staphylococcus aureus in intensive care units.
Am J Infect Control 2013;41:1236-1240.

黄色ブドウ球菌は病院感染を引き起こし、ICUにおける高い死亡率や高額な医療費の要因となっている。本研究では、黄色ブドウ球菌による鼻腔内でのコロニー形成と人工呼吸器関連肺炎(VAP;ventilator-associated pneumonia)の関連、および黄色ブドウ球菌の伝播における環境因子の役割を評価した。
対象は、2008年9月から2010年8月までの2年間にICUに入院した患者1,037名とし、MRSA(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus)またはMSSA(Methicillin-sensitive S. aureus)によりVAPを発症した患者についてコホート調査を実施した。鼻腔スワブは、ICUに入院した全患者から入院時およびICU滞在中に採取した。また、医療従事者の手指や環境表面からもサンプルを採取し、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)による分子疫学的分析を行った。
その結果、1,037名のICU入院患者のうち168名がVAPを発症し、黄色ブドウ球菌によるVAPは12.5%(21名)であった。鼻腔内での黄色ブドウ球菌によるコロニー形成とVAP発症との関係を統計解析した結果、鼻腔内でのコロニー形成はVAP発症のリスクファクターであることが示された。また、MRSAは医療従事者の手指や環境表面のサンプルからも検出されたことから、これらの環境因子は感染患者自身に次ぐ第2の感染源となる可能性が示唆された。分子疫学的分析の結果、検出された黄色ブドウ球菌からは複数のPFGEパターンが観察された。MRSA分離株からは6つのパルスタイプが確認されたが、そのうち強い抗微生物薬耐性を持つタイプJが最も高頻度で検出された(45.5%)。また、MRSAが環境を介して間接的に他の患者に伝播した可能性を強く示唆する感染例が確認された。
以上より、黄色ブドウ球菌による鼻腔内コロニー形成はVAP発症のリスクファクターであり、保菌患者に近い環境表面や医療従事者の手指もICUにおける感染源となりうることから、効果的な清掃や手洗いの実施が必要である。

(訳:橋倉万由子、木津純子)

Carlisle Vol.19 No.2 p8-10 Summer 2014

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