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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.20 No.1 2015

Acinetobacter baumannii分離における重症患者へのクロルヘキシジン清拭の影響

Mendoza-Olazarán S, Camacho-Oritiz A, Martinez-Reséndez MF, et al.
Influence of whole-body washing of critically ill patients with chlorhexidine on Acinetobacter baumannii isolates.
Am J Infect Control 2014;42:874-878.

A. baumanniiは、最も重要な医療関連感染の原因菌のひとつで、多くの抗菌薬に高度耐性を示す。また、この菌種は環境表面に長く生存し、消毒薬への耐性も報告され、病院環境にバイオフィルム産生能力を裏付けるものと考えられた。このようななか、A. baumanniiの保菌者に対して毎日4%クロルヘキシジングルコン酸塩(CHG)洗浄剤による全身消毒と標準的な感染制御策の組み合わせで、同菌の皮膚の保菌を有意に減少させたとする報告がされた。しかし、同時に複数の介入を実施していることや患者の特性の違いから、CHG洗浄の確かな有効性を示しているとはいえない。そこで今回A. baumannii保菌患者に2%CHGでの全身消毒を実施しその効果を評価した。
研究はモンテレイ(メキシコ)の460床の急性期病院で行われた。対象病棟は成人の内科と外科ICU合わせて20床。対象患者はCHGアレルギー患者、20%以上の熱傷患者、妊婦、18歳以下の患者を除く327名であった。研究期間は介入前を2012年1月1日~6月30日、介入期間を2012年7月1日~12月31日とした。全身消毒の方法は、入院日から退院日まで毎日、顔以外を2%CHG含有ワイプで清拭した。洗髪も2%CHG入りシャンプーで行われた(リンスなし)。対象分離株は介入前は80株、介入期間は69株の計149株で、同定ののちMIC値測定と感受性検査が行われた。またすべての分離株においてバイオフィルム産生能が試験された。さらに、遺伝子タイプを特定しパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)も実施した。
結果、分離された149株はPCRにてすべてA. baumanniiと確定された。CHGのMICは介入前の1月~5月は64mg/mL(MIC50ならびにMIC90)だったが、6月に128 mg/mLと増加した。介入期間となる7月、8月のMIC50は両月とも128 mg/mL、MIC90では7月は256mg/mL、8月は128mg/mLだったが、10月~12月はMIC50で8mg/mL、MIC90で16 mg/mLと低下した。一方、抗菌薬はtigecycline以外ほとんど高度耐性だった。CHGのMIC値と薬剤感受性に相関はなかった。バイオフィルム産生は149株中144株にみられたが、薬剤耐性とバイオフィルム産生には関連はなかった。PFGEの結果はpulsotypeを〔介入前期/介入期〕で分類するとクローンタイプA(41/18)、同B(3/30)、同A1(1/0)、同A2(2/2)、同A3(2/1)、同A4(0/1)、同A5(0/1)、同A6(0/1)、同C(10/0)、同D(5/1)、同D1(1/0)で、交差感染が考えられるクローンAは介入前期で63%、介入期では35%分離され、クローンBでは介入前期は9%で、介入期は44%であった。
2%CHGで全身消毒をした患者から分離されたA. baumanniiは、CHGのMIC値の低下と、バイオフィルム有産生能とクローンタイプの変化を示した。

(訳:菅原えりさ)

Carlisle Vol.20 No.1 p8-10 2015

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