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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
vol.20 No.4 2016

脳外科病棟におけるクロストリジウム・ディフィシル リボタイプ053によるアウトブレイク

Nagar A, Yew P, Fairley D, et al.
Report of an outbreak of Clostridium difficile infection caused by ribotype 053 in a neurosurgery unit.
J Infect Prev 2015;16:126-130.

クロストリジウム・ディフィシル(CD)感染症は、一般的に抗菌薬使用により腸内細菌叢が撹乱され発症する。ヨーロッパでは300以上のCDリボタイプが報告されており、リボタイプ027といったいくつかのCDは毒性が強く、アウトブレイクを起こす傾向がある。
2011年11月に北アイルランドの病院(775床)の脳外科病棟(23床)において、リボタイプ053のCD感染アウトブレイクが起きた。最初に、脳外科病棟の隣接した2つの部屋に入院中の4人の患者が症状発現とCDトキシン陽性となった。その後、同時期に同室に入院して他院に転院した別の患者がCDトキシン陽性とグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GDH)陽性であることが判明した。5人のCD感染症患者のうち3人はリボタイプ053であり(他の2人はそれぞれリボタイプ02,014)、同じ時期に入院していたことより、アウトブレイクと考えられた。脳外科病棟を5日間閉鎖し、清掃と環境消毒を行った。病棟内清掃は1日2回から4回に増やし、環境や設備の消毒は次亜塩素酸製剤(有効塩素1,000ppm)で行い、その後過酸化水素蒸気による除染を行った。スタッフから次亜塩素酸製剤の呼吸器への有害反応が報告されたため、二酸化塩素消毒剤に変更した。カーテンは全て交換した。病棟は6人部屋から4人部屋にし、ベッド間を離し、看護スタッフを増員した。CD感染が疑われた患者は個室管理とし、医療従事者は個人保護具の使用を含めた接触予防策を行い、石けんと水で手洗いを行った。さらに、ICNより医療従事者に対し、教育、監視がなされた。
オーストリアの病院でも重篤なCD感染症が発症し、22例のうち10例はリボタイプ053によるものであった。リボタイプ053は伝播性が高く、強毒性でアウトブレイクを起こすと考えられている。本報告のリボタイプ053検出患者は長期入院患者であり、肺炎のため広域抗菌薬を数コース使用していた。また、これら患者は下痢を起こしやすい経腸栄養を必要とし、長期入院中にはCDトキシンが陰性であったことも多く、CD感染症の診断が難しかった。それゆえ、隔離が遅れ、伝播を起こした。本報告は、英国、アイルランドでは初めてのリボタイプ053アウトブレイクの報告である。

(訳:豊口禎子)

Carlisle Vol.20 No.4 p8-10 2016

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