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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
vol.20 No.4 2016

洗浄剤(界面活性剤)ワイプでの病原体除去による病原体の移動と変動

Ramm L, Siani H, Wesgate R, et al.
Pathogen transfer and high variability in pathogen removal by detergent wipes.
Am J Inf Control 2015;43:724-728.

英国の感染制御では、汚染された環境表面の洗浄には洗剤と水またはマイクロファイバーと水の使用が提唱されている。また、複数の研究でマイクロファイバーや抗菌ワイプの有効性が検討されているが、洗浄剤ワイプについての検討は少ない。そこで今回、S. aureusA. baumanniiC. difficile sporesの除去と伝播予防する洗浄剤ワイプを対象に、拭き取り効果と拭き取ったワイプからの菌移行試験を実施した。
実験には、英国で製造販売され医療施設で使用されている7種類のワイプを使用した。菌液は、欧州標準法に従って調製されたS. aureusA. baumanniiC. difficile sporesで、各菌液に有機物(ウシ血清アルブミン)を添加した懸濁液を使用した。
微生物の拭き取り効果測定は、重量150g負荷で10秒間楕円形に回るよう設定された機械;Wiperatorに取り付けたワイプ(2×2cmに切断)で10μLの懸濁液を塗布し37℃で30秒間乾燥させたステンレスディスクを、機械的に拭き取った。拭き取り後のステンレスディスクはビーズ入り液体培地に投入し1分間撹拌、その後5分間の中和処理後培養し生育菌数を測定した。ワイプからステンレスディスクへの微生物移行測定は、前述の実験で拭き取ったワイプを「Wiperator」に取り付け、ステンレスディスクを3回連続して拭き、同様の処理後に培養し生育菌数を測定した。なお、コントロールはステンレスディスクに懸濁液を塗布し乾燥後の菌数で確認した。また、コントロールと拭き取り後の菌数の差からワイプにより拭き取られた菌数を推算した。
結果、拭き取り効果測定では、ワイプ7種類により拭き取られたS. aureusの菌数の平均は1.45Log10だった。うち1種類は他より有意に拭き取った。拭き取られたA. baumanniiは平均3.51Log10で7種類とも拭き取った菌数に差はなかった。C. difficile sporesは平均0.96 Log10拭き取れたが、その菌数にばらつきがあった。一方、移行菌数測定では、最も移行したのがC. difficile sporesで、次がS. aureus、最も低値だったのがA. baumanniiであった。
市販洗浄剤ワイプの効果には製品差があったが、微生物学的検討においては総じてA. baumanniiには効果的で、S. aureusC. difficile sporesには満足のいくものではなかった。また、菌が付着したワイプで拭き取ることで他へ移行することも確認できた。
環境表面の洗浄は多くの国で提唱しているが、微生物の拡散を避けるためにも使用しているワイプの限界も説明すべきである。

(訳:菅原えりさ)

Carlisle Vol.20 No.4 p8-10 2016

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