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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.21 No.1 2016

手指衛生遵守への手指消毒薬設置場所の影響

Cure L, Van Enk R
Effect of hand sanitizer location on hand hygiene compliance.
Am J Infect Cont 2015;43:917-921.

手指衛生は病院内感染制御において最も重要である。医療従事者は、少なくとも患者に接する前後で手指消毒を行わなければならない。手指消毒薬は全病棟で利用可能であり、手指衛生に重要となる。手指衛生における介入は、訓練講習会やビデオ講義といった教育等で行われてきた。手指衛生遵守に関する多くの研究はいくつかの因子を組み合わせて行われているが、1つの要素のみを強調する結論が多い。本研究では、手指消毒薬の病室内設置という1つの因子が手指衛生遵守に与える影響に着目し、病室内の手指消毒薬設置場所の利便性と手指衛生遵守率の関係を調査した。
 2010年2月から2012年2月に、米国中西部の404床の病院で調査を行った。各病室は同じ設計ではなく、形状が異なっているが、個室は類似した設計であった。手指衛生遵守率は、観察法により収集し、医療従事者が行った手指衛生回数を、手指衛生が必要な回数で除した。消毒薬の設置場所の評価は、病室内の消毒薬設置場所の利便性スコアと、病棟単位の標準化スコアを用いた。利便性スコアは、病室のレイアウトや作業の流れの観点から消毒薬が使い易い場所にあるかを示しており、手指消毒薬が病室入り口やケアの場所から容易に見つけられるところにある、すぐ届くところにある、障害物がない、動線上にある、適切な高さ(床から85~110 cm)にある、等で評価した。標準化スコアは、消毒薬が病棟内で同一場所に設置されている率とした。
 全部で26,707の手指衛生監視を行った。病院全体の手指衛生遵守率は81.6%であり、95%信頼区間は81.16~82.09%であった。12の入院病棟での利便性スコアは手指衛生遵守率と有意に相関し(p=0.0046)、手指衛生遵守率と病室入り口から見える場所への消毒薬設置(p=0.003)、および病室入り口から手の届く位置または1歩以内の位置への消毒薬設置(p=0.00055)は有意に相関した。一方、標準化スコアは手指衛生遵守率には相関せず、最も標準的な設置場所は部屋内側の入り口付近であった。手指衛生遵守には消毒薬設置場所が影響することが示唆された。

(訳:豊口禎子)

Carlisle Vol.21 No.1 p8-10 2016

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