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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.21 No.1 2016

媒介物と指腹間でのAcinetobacter baumanniiの伝播率(指への伝播と指からの伝播)
-ラテックス製手袋着用の有無

Greene C, Vadlamudi G, Eisenberg, et al.
Fomite-fingerpad transfer efficiency(pick-up and deposit) of Acinetobacter baumannii─with and without a latex glove.
Am J Infect Control 2015;43(9):928-934.

Acinetobacter baumanniiは、媒介物を介して容易に伝播し、環境からの根絶が極めて困難であるうえ、強い薬剤耐性を持つため、医療関連感染における重要な病原菌である。効果的な感染制御のためには、環境を介したAcinetobacter baumanniiの伝播機序を理解することが不可欠である。しかしながら、病原菌が指へ伝播(pickup)する効率と、指から伝播(deposit)する効率に関する理解は進んでいない。そこで、本研究では、ラテックス製手袋着用時および非着用時に分け、Acinetobacter baumanniiの指腹部から媒介物への伝播率および媒介物から指腹部への伝播率を評価した。併せて、Acinetobacter baumanniiが付着した指腹部で他の清潔な指腹部へ接触した場合の伝播率について調査した。
 調査では、媒介物として、ガラス、ステンレススチール、磁器、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ゴムの6素材を用いた。
 その結果、ラテックス製手袋をしていないときの媒介物から指腹部への伝播率は24.1%、指腹部から媒介物への伝播率は5.6%であった。一方、ラテックス製手袋を着用している時の媒介物から指腹部への伝播率は、着用していないときより55.9%低下し10.6%、指腹部から媒介物への伝播率も47.1%低下し3.0%になった。菌が付着した指腹部から他の清潔な指腹部への平均伝播率は32.5%であった。
 Acinetobacter baumanniiの伝播率は、手袋着用の有無にかかわらず、指腹部から媒介物への伝播率に比較し、媒介物から指腹部への伝播率の方が統計的に有意に高いことが認められた。媒介物の素材ごとの伝播率については、ゴムがわずかに高い伝播率を示したが、ゴム以外には有意差は見られなかった。手袋着用によって伝播率は低下したものの、完全に防ぐことはできなかったことから、病原菌の伝播抑制のためには、患者ケア時の頻繁な手袋交換が重要であることが示された。また、指腹部から指腹部への伝播率が最も高かったことから、素手で患者に接触する際には、手洗いによる手指衛生の実施が重要であることが強調された。

(訳:橋倉万由子、木津純子)

Carlisle Vol.21 No.1 p8-10 2016

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