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Carlisle
医療関連感染情報季刊誌より
Vol.21 No.1 2016

自動手指衛生トレーニングシステムは、手指衛生テクニックを向上させるが遵守率は上がらない

Kwok YLA, Callard M, McLaws M-L, et al.
An automated hand hygiene training system improves hand hygiene technique but not compliance.
Am J Infect Control 2015;43:821-825.

WHOの手指衛生ガイドラインでは、アルコールによる手指衛生を7段階の手技で少なくとも20秒かけて実施することを推奨しており、それを正しく実施するにはテクニックの習得が必要である。今回、正しい手指衛生テクニック習得のための自動トレーニングシステムを導入し、その効果と導入前後の手指衛生遵守率を比較した。
調査はニューサウスウェールズ(オーストラリア)にある350床の教育病院で行われ、産科病棟や救急部門も含む18病棟のスタッフが自ら参加し、2013年1~8月まで実施された。調査に当たり、7段階の手指衛生手技のイラスト入り新ディスペンサーが設置された。自動トレーニングシステムとは、7段階の手指衛生各パーツの正しくできた回数をカウントし、それぞれに要した時間を測定するものである。研究チームは参加者にその仕様と使い方(ビデオが内蔵されていること、正しくできるまで繰り返すよう指示されること、各自の手指衛生にかかる速度の最低と最高が示されることなど)を説明し、トレーニング後には手指衛生が完全に正しくできたことを証明する達成証明書を授与した。さらに参加者にはトレーニング終了時にアンケートを実施した。遵守率はAustralian National Hand Hygiene Initiative(NHHI)に従い、年3回の決められた期間(①11/1~3/31、②4/1~6/30、③7/1~10/31)に収集する院内全体のデータを用い、介入前を2011~2012年の①~③の期間、介入期間は2013年の①~③の期間、そして介入後を2014年①~③の期間として評価した。
本トレーニングには789名(79%/全スタッフ)のスタッフが参加した。その結果、7段階各パーツに要した時間は平均9秒から11秒。1回で習得した割合が最も高かったパーツは手掌と手掌を擦り合わせる手技、次は手掌を合わせて指間をこする手技であった。最も低かったのは親指を擦る手技であった。アンケート結果ではこの機器の評価はおおむね高く、全体の86%が手技を身につけるための革新的な機器であると回答し、69%がこのシステムを活用すればより良くテクニックを学ぶことができると回答した。一方、遵守率は介入期間の最後(3回目)で75%から72%に低下したが、介入後においては最初から82%を示し、これを3期間とも維持した。しかし介入前後の比較において有意な差は認められなかった。
手指衛生手技を身につける自動トレーニングシステムは意義あるが、遵守率の向上には結びつかなかった。

(訳:菅原えりさ)

Carlisle Vol.21 No.1 p8-10 2016

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