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Y's Letter
感染対策情報レター
2022/06/20

CDC:新生児集中治療室患者における感染予防と管理のための勧告 中心静脈ライン関連血流感染(CLABSI)


Y’s Letter Vol.4.No.27

Publised online:2022.06.16 Download
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はじめに

米国疾病管理予防センター(CDC:Centers for Disease Control and Prevention)より「新生児集中治療室(NICU:Neonatal Intensive Care Unit)患者における感染予防と管理のための勧告:中心静脈ライン関連血流感染(CLABSI:Central Line-associated Blood Stream Infections)」が2022年2月に公表されました1)2)。本勧告は「NICUにおける感染予防と管理のためのガイドライン」の一部で、NICU患者におけるCLABSIの予防と管理に特化して、エビデンスに基づく新しい勧告が示されています。同ガイドラインは、セクションが完成するごとに分割して発行されており、本勧告は2020年9月に公表された「NICUにおける感染予防と管理のための勧告:黄色ブドウ球菌」に続くものです。

NICUにおけるCLABSI

CLABSIは、NICUに入院する乳児の侵襲性感染症の中で最も頻度が高く、高い罹患率と死亡率の原因となっています3)。また、CLABSIを発症した乳児が治癒したとしても、入院期間は長期化し、その結果、医療費の増加や、神経発達や成長の転帰の悪化を含む、より大きな合併症などに悩まされる場合もあります4)-6)。NICUの乳児は、免疫系が未熟であることに加え、呼吸・栄養補給に不可欠な気管内挿管や臍帯・中心静脈・動脈カテーテルなど生命維持に必要な侵襲的処置を要するなど感染のリスク因子を有しています。さらに、これらの乳児は皮膚や腸の完全性が損なわれていることが多いため、CLABSIにつながる病原体の移行を助長する可能性もあるとされています3)
CLABSI予防のための効果的な戦略を裏付けるエビデンスは成人および年長児では多く存在しますが、NICU患者におけるデータは限られていました1)。しかし、単一施設や多施設共同研究で中心静脈ラインの挿入と管理に焦点を当てたバンドルでの介入によりCLABSIの減少が可能であることも示されてきています。こうした背景の基、NICU患者におけるCLABSIの予防に的を絞った、エビデンスに基づく推奨事項を提供するために本勧告が作成されました。

勧告の概要

本勧告では14のKey Questionに対して、以下の22の勧告とその推奨が示されています。

勧告 推奨
勧告1. NICU患者におけるCLABSIを減らすために、すべての患者との接触の前に、手指衛生のみと比較して、手指衛生後に非滅菌手袋を使用するかどうかは、未解決の問題である。 推奨なし
勧告2.A. NICU患者の臨床ニーズに基づいて中心静脈ラインの種類(例:臍帯静脈カテーテル、末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC:Peripherally Inserted Central Catheter)、トンネル型カテーテルなど)を選択する。 推奨
勧告2.B. NICU患者に挿入する中心静脈ラインの種類の選択は、CLABSI予防のみに基づくべきではない。 推奨
勧告3.A. NICU患者に挿入する中心静脈ラインの種類(例:臍帯静脈カテーテル、PICCなど)に適した挿入部位を、患者の臨床ニーズに基づいて選択する。 推奨
勧告3.B. NICU患者における挿入部位の選択は、CLABSI予防のみに基づくべきではない。 推奨
勧告4. NICU患者の臨床ニーズに基づいて、最も少ないルーメン数のカテーテルを選択することを検討する。 条件付き推奨
勧告5. NICU患者におけるCLABSIを予防するため、有益性が潜在的リスクを上回ると判断される場合は、皮膚消毒にクロルヘキシジンアルコールの使用を検討する。クロルヘキシジン含有製剤のリスクとベネフィットを評価する際には、在胎週数、生活年齢、皮膚の成熟度を考慮し、対象患者を決定する必要がある。 条件付き推奨
勧告6.A. NICU患者におけるCLABSIを予防するために、有益性が潜在的リスクを上回ると判断される場合は、クロルヘキシジン浴の使用を検討する。 条件付き推奨
勧告6.B. クロルヘキシジン浴が有益と思われるNICU患者の特定は、依然として未解決の問題である。 推奨なし
勧告6.C. NICU患者において、クロルヘキシジン浴を実施する場合の頻度は依然として未解決の問題である。 推奨なし
勧告7. NICU患者のCLABSIリスクを減少させるために、中心静脈ラインハブへのアクセス回数を最小限にし、中心静脈ラインからの血液サンプリングを最小限にする。 推奨
勧告8. NICUでCLABSIが継続している場合、主要な感染制御策に加えて、NICU患者に対する中心静脈ラインの抗菌薬ロックを検討する。 条件付き推奨
勧告9.A. NICU患者の臍帯静脈および臍帯動脈カテーテルは、留置期間の延長に伴うCLABSIリスク上昇が懸念されるため、できるだけ早く、不要になった時点で抜去する。 推奨
勧告9.B. NICU患者の臍帯動脈カテーテルは留置期間が7日またはそれ以前に抜去を検討する。 条件付き推奨
勧告9.C. NICU患者の臍帯静脈カテーテルは留置期間が7日またはそれ以前に抜去を検討する。 条件付き推奨
勧告9.D. 長期的な中心静脈アクセスを必要とするNICU患者の臍帯静脈カテーテルは留置期間が7日またはそれ以前に臍帯静脈カテーテルを抜去し、PICCや他の長期留置用中心静脈カテーテルを挿入することを検討する。 条件付き推奨
勧告10.A. NICU患者においては、留置期間の延長に伴うCLABSIリスク増加が懸念されるため、PICCをできるだけ早く、不要になった時点で抜去する。 推奨
勧告10.B. 中心静脈アクセスが継続的に必要な新生児に対し、NICU患者のCLABSIを減らすために、長期間留置されたPICCを抜去し交換するかどうかは、依然として未解決の問題である。 推奨なし
勧告11. NICU患者のCLABSIを予防するために、カテーテルケア専任チームの導入を検討する。 条件付き推奨
勧告12. NICU患者のCLABSI発生率を低下させるために、単一または複数の介入による質向上の取り組みの一環として、中心静脈ラインの挿入と管理のための「バンドル」介入を使用する。すべての患者に対する挿入と管理のバンドルの要素は、CDCによって推奨されている7) 推奨
勧告13. NICU患者におけるCLABSIのリスク低減のために、予防的抗菌薬投与をルーチンで使用しない。 推奨
勧告14. NICU患者におけるCLABSIの予防を目的とした予防的抗凝固薬投与を行わない。 推奨

本稿ではこの中の皮膚消毒に関する勧告である勧告5.(カテーテルの挿入と管理のための皮膚消毒)および勧告6.A~C(クロルヘキシジン浴)についてご紹介します。

皮膚消毒に関連するKey Questionに対する勧告と推奨、エビデンスの概要

・カテーテルの挿入と管理のための皮膚消毒

Key Question
5. カテーテル挿入・管理のために皮膚消毒を必要とするNICU患者において、クロルヘキシジンアルコールはポビドンヨードアルコールと比較して、CLABSIを予防するか?
勧告 推奨
勧告5. NICU患者におけるCLABSIを予防するため、有益性が潜在的リスクを上回ると判断される場合は、皮膚消毒にクロルヘキシジンアルコールの使用を検討する。クロルヘキシジン含有製剤のリスクとベネフィットを評価する際には、在胎週数、生活年齢、皮膚の成熟度を考慮し、対象患者を決定する必要がある。 条件付き推奨

この勧告は1件のランダム化比較試験8)(RCT:Randomized Controlled Trial)が裏付けとなるエビデンスになっていますが、間接的であることと不正確さからエビデンスの質は非常に低いとされています1)
CLABSI予防のための皮膚消毒において、ポビドンヨードと比較してクロルヘキシジンアルコールの有効性はNICU患者ではない他の集団では実証されています。一方、NICU患者においてカテーテル挿入または管理にクロルヘキシジンアルコールまたはポビドンヨード(基剤不明)のいずれを使用しても、感染症の減少は見られなかったと報告されています8)
有害性の面では、クロルヘキシジンの皮膚吸収が乳児の半数に認められたとされていますが、重大な全身性の副作用は認められていません。また、NICU 患者(体重1500g以上、生後7日目以降)においてはクロルヘキシジンの適用部位に接触性皮膚炎等もなかったとされています。

・クロルヘキシジン浴

Key Question
6. NICU患者において、クロルヘキシジン浴は、入浴なしまたはプラセボ入浴と比較して、CLABSIを予防するか?
勧告 推奨
勧告6.A. NICU患者におけるCLABSIを予防するために、有益性が潜在的リスクを上回ると判断される場合は、クロルヘキシジン浴の使用を検討する。 条件付き推奨
勧告6.B. クロルヘキシジン浴が有益と思われるNICU患者の特定は、依然として未解決の問題である。 推奨なし
勧告6.C. NICU患者において、クロルヘキシジン浴を実施する場合の頻度は依然として未解決の問題である。 推奨なし

これらの勧告は1件のRCT9)と3件の観察研究10)-12)が根拠となっていますが、不正確さからエビデンスの質は低いとされています1)。また、1件の研究9)は中心静脈ラインの挿入・管理バンドルが広く実施されるようになる2010年以前の研究です。
CLABSI予防のためのクロルヘキシジン浴の有効性は、NICU患者ではない他の集団で実証されています。一方、NICUにおいてはクロルヘキシジン含浸布を用いた単回入浴と生食含浸布、入浴なしを比較したRCTでは、培養陽性敗血症および臨床的敗血症の発生率に各群で差は認められなかったとされています9)。しかし、CLABSI発生率のベースラインが高い施設で行われたクロルヘキシジン含浸布と石鹸または入浴なしを比較した2つの観察研究では、臨床的に有意義または有意にNICU患者におけるCLABSI発生率を低下させたとしています10)12)。これらのことから、単回のクロルヘキシジン浴には有益性がないことが示唆されますが、挿入・管理バンドルの実施および感染予防・管理方法の遵守にもかかわらずベースラインのCLABSI発生率が高い施設ではNICU患者に対するルーチンのクロルヘキシジン浴の有益性が示唆されるとしています。
有害性の面では、クロルヘキシジン含浸布を単回の入浴に使用した場合の研究において、低体温症は観察されませんでした9)。また、3つの研究すべてにおいて、含浸布や溶液を用いたクロルヘキシジン浴に関連する皮膚反応は報告されていません1)。なお、クロルヘキシジン浴の方法(含浸布か従来の入浴法)、入浴の頻度、および対象集団についての推奨は意図的に曖昧なままにされています。

おわりに

NICUに入る乳児の状態は様々です。超低出生体重児の場合もあれば、手術が必要な正期産児の場合もあり、両者では感染リスクも感染予防策も異なります3)。そのため、状況に応じた感染対策の実施が重要となります。本勧告はNICUにおけるCLABSI対策がエビデンスに基づいて示されており、感染対策を検討する際に役立つ資料になると思われます。また、本勧告に関連して米国医療疫学会(SHEA:The Society for Healthcare Epidemiology of America)よりNICUにおける医療提供のための付属ガイダンスも公表されています3)。こちらはエビデンスとしては不十分ですが重要テーマについて、専門家の臨床経験を組み込み、CDCが推奨する要素以上のものが含まれる実践的なガイダンスとなっています。なお、これらは米国で発表されたものであり、日本国内では発売されていない製品の記述も含まれますが、参考になる情報も多いと思われます。
本稿でご紹介した皮膚消毒に関する項目以外の勧告やエビデンスについての詳細は、本勧告原文をご参照ください。

<参考文献>

  1. CDC: NICU: CLABSI Guidelines: Recommendations for Prevention and Control of Infections in Neonatal Intensive Care Unit Patients: Central Line-associated Blood Stream Infections. Guideline: NICU – CLABSI 2022[Full Text
  2. CDC: NICU: CLABSI Guidelines: Recommendations for Prevention and Control of Infections in Neonatal Intensive Care Unit Patients: Central Line-associated Blood Stream Infections. Appendix: NICU – CLABSI 2022[Full Text
  3. Muller M, Bryant KA, Espinosa C, et al.: SHEA neonatal intensive care unit (NICU) white paper series: Practical approaches for the prevention of central line-associated bloodstream infections. Infect Control Hosp Epidemiol 2022; Mar 4:1-46.[Full Text
  4. Stoll BJ, Hansen NI, Adams-Chapman I, et al.: Neurodevelopmental and growth impairment among extremely low-birth-weight infants with neonatal infection. JAMA 2004;292:2357-2365.[Full Text
  5. Bright HR, Babata K, Allred EN, et al.: Neurocognitive Outcomes at 10 Years of Age in Extremely Preterm Newborns with Late-Onset Bacteremia. J Pediatr 2017;187:43-49 e1.[Full Text
  6. Bakhuizen SE, de Haan TR, Teune MJ, et al.: Meta-analysis shows that infants who have suffered neonatal sepsis face an increased risk of mortality and severe complications. Acta Paediatr 2014;103:1211-1218.[PubMed
  7. Centers for Disease Control and Prevention. Checklist for Prevention of Central Line-associated Blood Stream Infection. Accessed April 28, 2022.[Link
  8. Garland JS, Alex CP, Uhing MR, et al.: Pilot trial to compare tolerance of chlorhexidine gluconate to povidone-iodine antisepsis for central venous catheter placement in neonates. J Perinatol 2009;29:808-813.[PubMed
  9. Sankar MJ, Paul VK, Kapil A, et al.: Does skin cleansing with chlorhexidine affect skin condition, temperature and colonization in hospitalized preterm low birth weight infants?: a randomized clinical trial. J Perinatol 2009;29:795-801.[PubMed
  10. Cleves D, Pino J, Patino JA, et al.: Effect of chlorhexidine baths on central-line-associated bloodstream infections in a neonatal intensive care unit in a developing country. J Hosp Infect 2018;100:e196-e199.[PubMed
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  12. Quach C, Milstone AM, Perpete C, et al.: Chlorhexidine bathing in a tertiary care neonatal intensive care unit: impact on central line-associated bloodstream infections. Infect Control Hosp Epidemiol 2014;35:158-163.[Full Text

関連サイト