Review

Review INDEXCARLISLE INDEXHOME


Vol.6 No.2
Review-6

救急部における聴診器:感染の媒体になる?
Nunez, S., et al.
The stethoscope in the emergency department :a vector of infection? 
Epidemiol. Infect., 124:233-237, 2000.


最近の報告によると、聴診器は多くの患者と絶えず接触するため、感染の媒体となりうることが示唆されている。そこで、聴診器の汚染状況と消毒剤の効果を検討した。 
 1996年7月から9月にかけて、スペイン、カナリア諸島の一つ、テネリフェ島にあるHospital de la Candelaria(900床)の救急部において、医師と看護婦の個人所有の聴診器を調査の目的を隠して検査した。合計122本の聴診器隔膜の培養検査したところ、Staphylococcus epidermidisが最も高頻度(97%)に検出されたが、黄色ブドウ球菌(5%)、Acinetobacter属(4%)、Enterobacter agglomerans(0.8%)といった病原菌となる可能性のある菌も検出された。MRSAは分離されなかった。また、49本の聴診器の隔膜を、3種の消毒剤、96%エチルアルコール(n=19)、プロピルアルコールをもとにした消毒剤、instrunet(n=15)またはformaldehyde入り消毒石鹸、Lifosan(n=15)を浸み込ませた滅菌綿ガーゼでそれぞれ10秒間清拭した。 
 聴診器隔膜の平均微生物コロニー数は、清拭前は聴診器1本あたり132cfuであったが、聴診器隔膜を消毒剤で清拭、乾燥後では聴診器1本あたり0.3cfu(プロピルアルコール)、2.3cfu(アルコール)、11.8cfu(消毒石鹸)と顕著に減少し、なかでもプロピルアルコールをもとにした消毒剤が最も優れていた(コロニー数99%減少)。 
 医師と看護婦の聴診器には、微生物学的に差はみられなかった。救急部職員の聴診器を清拭する頻度を調査したところ、45%が年1回の清拭または清拭せずで、35%は月1回清拭していた。年1回清拭または清拭せずと回答したのは医師が29%と、看護婦の15%より有意に多かった。聴診器より病原微生物となりうる菌が検出されたことにより、救急部ばかりでなく、病棟、外来でも聴診器は感染の媒体となりうることが考えられた。

(訳:豊口禎子)


Carlisle Vol.6 No.2 p7-9 Summer 2001