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Vol.12 No.1
Review-4

手指消毒時の徹底したアルコールゲル製剤の使用が皮膚へ及ぼす影響について:生物学的データおよび感覚的データから
Houben E, De Paepe K, Rogiers V.
Skin condition associated with intensive use of alcoholoic gels for hand disinfection: a combination of biophysical and sensorial data.
Contact Dermatitis 2006; 54: 261-267.


 手指衛生は院内感染を防止する上で重要であり、しかも経済的である。ヨーロッパにおける手指衛生は、アルコール系消毒薬の手指への擦り込みが第一選択である。アルコール系消毒薬は、抗菌石鹸と比較して抗菌活性が強い、水洗いが不要である、持ち運びしやすい(特にアルコールゲル製剤)、病院で追加のインフラを必要としない、消毒時間を短縮できる、などの利点があるとされている。しかしながら、医療従事者におけるアルコール系消毒薬を用いた手指消毒の遵守率は、忘れる、仕事量が多すぎる、手指衛生に関する科学的な情報の提供が不足している、などの理由により低いのが現状である。さらに、遵守率を最も低くしている要因として、使用者の許容性に限界があることが指摘されている。手指衛生を日常的に行ってもらうためには、皮膚に快適さも供給すべきである。一般的に、アルコール系消毒薬は抗菌石鹸と比較して、皮膚への刺激性はないが、特に短鎖アルコール製剤は皮膚を乾燥させる(多くの製剤には皮膚軟化剤が含まれているのにも関わらず)との評価を受けており、激しい敏感肌を引き起こすとも言われている。
 今回、多種類のアルコールゲル製剤において、保湿剤の濃度、アルコール濃度、さらに使用するアルコールの種類による皮膚状態の変化および許容性について検討を行った。
 ランダム化二重盲検法により、6種類のアルコールゲル製剤(ゲル製剤A:70%エタノール+2%グリセリン、ゲル製剤B:70%エタノール+5%グリセリン、ゲル製剤C:70%エタノール+8%グリセリン、ゲル製剤D:75%エタノール+2%グリセリン、ゲル製剤E:80%エタノール+2%グリセリン、ゲル製剤F:70%イソプロパノール+2%グリセリン)を一日中使用し、比較検討した。皮膚状態は水分蒸発量(TEWL)、角質層水分、皮膚表面のpH、発赤や手荒れの程度を測定することにより評価した。また、使用者の許容性に関してはアンケート調査を実施し、使用者自身の感覚により評価した。
 TEWLの変化および皮膚への刺激を生じなかったアルコールゲル製剤はなかった。また、グリセリンの含有量に比例して皮膚に潤いを与え、皮膚のpHは減少した。一方、エタノール濃度を増加させると、皮膚の乾燥が増長する結果となった。また、アンケートにより、ゲル製剤にイソプロパノールは不適切であると評価を受けた。以上より、アルコールゲル製剤には、グリセリン濃度を高くした70%エタノール製剤が好ましいと考えられる。

(訳:荻野弘美、木津純子)


Carlisle Vol.12 No.1 p8-10 Spring 2007